SOLD OUT
本書は、1973年サンフランシスコで生まれで現在はロンドンとサンフランシスコで活動しているDaria Martin(ダリア・マーティン)の、ロンドンの複合施設バービカン内のギャラリーThe Curveにて2019年に行った展覧会に合わせて発行された作品集です。
ダリア・マーティンは、ギャラリーThe Curveでの展示の為に、彼女自身の家族の歴史から夢と記憶を蘇らせ、移住、消失と回復についての複雑な肖像画を制作しました。マーティンは展示の為に、彼女の祖母であるスージー・スティアスニが35年以上にわたって書き残した夢日記のシーンを映像とゲーム技術によって再現し、建築的なアプローチで新しいインスタレーションを制作しました。 元々精神分析の為に記録された2万ページ以上に及ぶスティアスニの夢日記では、幼少期に住んでいたモダニズム建築の別荘ヴィラ・スティアスニでの不穏な歴史に頻繁に立ち戻ります。その別荘は現在もチェコ遺産としてブルノ市内に残っています。
これらの手法の親密な出会いは鑑賞者を、彼女の祖母の潜在意識の迷路を通り抜け、1938年に16歳でナチスの占領という差し迫った脅威から家族と共に旧チェコスロバキアへ逃がれた時の事を語るスティアスニの一連の記憶と夢の中へと導き、彼女の祖母の好奇心とトラウマに満ちた歴史の探究で包み込みました。
作品『Tonight the World』では祖母の日記から5つの夢を再構築し、不安と侵入という繰り返し起こるテーマを増幅させました。ヴィラ・スティアスニでロケを行い、5つの夢はすべて祖母の幼少期の家またはその近辺で起こった出来事です。4人の女優がこの映像の全ての役を演じ、それぞれが異なる年齢とライフステージのスティアスニを表現しています。成人女性が子供を演じ、若い女性が中年の男性を演じ、中年の女性が少年を演じるなど、年齢や性別に応じた役柄を演じるのではなく、女優が入れ替わりながら演じています。
作品『Refuge』は、別荘ヴィラ・スティアスニを3Dデジタルレンダリングし再現したコンピューターゲームです。ゲームの指示に従い一人称のアバターが別荘のモノクロームの部屋を移動し、『Tonight the World』のそれぞれの夢に関連する5つのオブジェクトを探します。おもちゃのロボットや中国の武士の置物などはグレースケールのゲーム中で唯一カラーで登場するアイテムです。来場者はゲームのプレイ映像を見る事も出来、自分でゲームをダウンロードして遊ぶことも出来ます。『Refuge』は、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれるほどテクノロジー産業の中心地であるブルノのゲーム開発者と共同で開発されました。
本書には、彼女の作品『Refuge』と『Tonight the World』(ともに2019年)のインスタレーション写真のほか、マーティンとキュレーターのFlorence Ostende(フローレンス・オステンド)による対談、美術理論家のMaria Walsh(マリア・ウォルシュ)によるエッセイを収録しています。
この展示はその後サンフランシスコの現代ユダヤ博物館でも開催されました。
http://dariamartin.com/
https://sites.barbican.org.uk/tonighttheworld/
https://www.e-flux.com/announcements/262577/daria-martin-tonight-the-world/